叢雲カゲツ
寝たくない。お腹すいたとき用に買ったやつも食べたくない。
前もこんな感じの空気感やったなって思う。あの時も、返事がないあいつの最後の言葉を何度も頭の中で繰り返して、通話に出るのを待ちながら、時々気絶しながら何度も何度も目をこじ開けて朝を待った。夜が明けて、日が昇って。その日ぼく連日朝から任務やったからさ。なんも食べなくて、なるべく眠らなくて、目を離さずに、ずっとずっと待って……そのあとどうなったっけ。あいつは戻ってきたけど。いつ戻ってきたっけ。…もうそこまで覚えてないな。でも眠らない方法のためにやったこともその後起きたことも覚えてる。夜にはおったんや。昼は…うん、そう。途中で家に帰されたから。効果きれて苦しくもなくなってやっと寝れた。……今それは手元にないのがくやしい。散歩に出てもいいかもな、遠くを目指してもええけど…いまはバレちゃうから。みんなの中にその人も僕もいない。もっと言うと、誰ひとりおらんのにさ。どうやったら届くかな。できることは、なんでも。なんでも…それがわかるのはぼくだけ。今は誰も余裕ないから。それだけが、ずっと不安。ぼくのトラウマ。
みんな目に見えたものだけを信じる。確かめるのは必要なこと。確かめられんぼくは偽物。普通、恵まれとる、なんもない、そういうへだたりでぼくはいつも外にいる。どうやってぼくを認めてもらうん?みんなはどうやって認めてもらったん?ぼくがなんもないっていうんは、そういうことなんやなぁ。だからぼくは正しく、間違いなく普通であることを求められてきた。なんの普通やろ。なにが普通やろ。そういうのに答えられるひとはおらんから誰も教えてはくれない。自分こそが普通、ルールの中こそ普通。したがってれば普通。じゃあきっと、あの選択をしたぼくも普通ってこと。壊しても壊れても。目に見えてずっとそうじゃなきゃ、すぐ元通りのぼくは半永久的に普通。言われた通り、ルール通り普通。寒いな。寒がりなんよなぼく。